2014年11月8日土曜日

【映画備忘録】 アメリカ映画 「フルートベール駅で」



「人種差別と生活格差が生む、高粘度な負のしがらみ。正の行動を引き起こすには悲しい出来事がなくてはならないのか」ということ。

出所したばかりの22歳の黒人青年が、2009年1月1日の年越しに、警察官に銃で撃たれて死亡した事件を基に映画化。
映画祭や賞レースを席巻したドラマである。

監督は、本作で長編映画 デビューを飾ったライアン・クーグラー。主人公の黒人青年を『クロニクル』などのマイケル・B・ジョーダンが演じ、オスカー受賞者のオクタヴィア・スペン サーが共演。


新年を迎えようという12 月31日、家族や友人といつもの日常を過ごす青年の姿を描き、突然この世から去った彼の運命の残酷さやはかなさを浮き上がらせる。

事件の痛ましさや、残された者の憤りと悲しさが胸に突き刺さる。



人種差別、生活環境は、誰しも選べずに生誕するもの。

資本主義社会のアメリカでは、この問題は歴史的に根深く、自由な思想や哲学、概念を受け入れる半面、適切に制御できていないのが現状だ。

生まれた環境により、様々な機会が制限され、隔離され、輝かしい夢を抱くこともできず、次世代になっても抜け出しきれない無限ループに陥る。

平等とは程遠い世界だ。



是非ともこの映画を見て、自分に置き換えて考えてほしい。

悪しき環境を憎む心と表裏一体の純粋な心。

素晴らしい映画だ。


★公式ホームページ
http://fruitvale-movie.com/

★予告編



2014年9月14日日曜日

【映画備忘録】 日本映画 「地雷を踏んだらサヨウナラ」

  「裏表のない心 と 東南アジアの暑さにも負けずもブレない情熱は、やはり人の心を動かし刻まれる」ということ。


1999年の戦場カメラマン「一之瀬泰造」の実話を基にした作品。
もう15年もの時が経っており、主演の浅野忠信は当時まだ25才という若さだ。

ただ、彼の白々しくも真実味のある演技は、昔から変わらない独自のスタイルだということに気づかされた。
そして、何よりもあまり年をとった感がないのが不思議だ(笑)



舞台は1972年、戦場カメラマンを目指すフリージャーナリスト「一之瀬泰造」は、カンボジア戦地にいた。

猪突猛進で少年のような性格は、現地の人々との垣根のない家族のような付き合いを生んでくれていた。
複雑な戦争背景を抱えたカンボジアにて、戦場写真を新聞社に売りながら、生計を立てていた。

フランス領インドシナからの独立、カンボジア内戦、ベトナムとの武力衝突、アメリカ・ロシア・中国の軍事介入、王政社会主義の崩壊、共産ゲリラ組織「クメールルージュ」の存在、ポル・ポトによる大虐殺、知的階層虐殺により14歳以下の人口の割合が85%、今の王国になってまだ20年程度。

 26歳と若くしてこの世を去った彼の生き様を、戦争の愚かさを表現しつつも、温かい人間模様が垣間見れる、心に残る一作。


よくある、「旅行をきっかけにこの国を知りました^^」とか「映画をきっかけにこの国を知りました^^」というノリで気軽に見てほしい。

井の中の蛙大海を知らず、にならないよう、映画を通して客観的に自国、自分自身を観察してみると、普段気付かない自分に気づくことができるかもしれません。


2年前に一人カンボジアのアンコールワットのある「シェムリアップ」という街を訪れた。

ゲリラ組織の聖地である「アンコールワット」を目指して死んでいった一之瀬泰造の足跡をたどったりもした。
映画に描かれている通り、経済格差がまだまだ埋まらない現地でも、地元の貧しい家族、子供たちはこころ豊かで穏やかだった。


地元の子供に案内をしてもらい、泰造のお墓の前で撮影。
(お墓の前での撮影は良くないですが。。。^^;)
地元の方々が訪れる人たちのために、ちっちゃな
ギャラリーを手作り。

泰造が駆け抜けたであろう、アンコールワットの裏手からのショット。


出入り口で小物を売る少女。

 5時間後にアンコールワットを出ると、まだ少女がそこに。
炎天下の中、疲れてしまったのか、カゴに顔をうずめて休んでいるようだった。

声をかけると、ぐったりした顔を持ち上げ、健気に笑顔を返してくれた。

もちろん、お土産を3つ買いました。
家族のために現金収入を確保するため、頑張るかわいい子でした。

アンコールワットのサンセット。
言葉では言い表せない幻想的なひと時だ。




日本のあるお寺が支援している児童養護施設でのひと時。
日本の児童養護施設の子供たちとなんら変わらない、屈託のないかわいい子たち。
教育も良く、礼儀正しい子供たち。

ただ現実、卒業後の社会への道に、輝かしい光が期待できるわけではない。

「孤児院」ではなく「児童養護施設」ということなので、少なからず経済状況は改善はしているのかもしれない。




是非訪れる際は、その国の歴史、文化、人々に直接触れ、体感し、本質を感じ取ってほしい。

日本で「苦労が多いなぁ」とか、「ツイてないなぁ」とか、「なんでこんな人生なんだろう」と思う前に、もっともっと苦労している人たちが大勢いることに気づくと、次の道がぼんやりと見えてくるかもしれません。


☆ 劇場版トレーラー
https://www.youtube.com/watch?v=TbWg27UKIcs

☆ 映画情報
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E9%9B%B7%E3%82%92%E8%B8%8F%E3%82%93%E3%81%A0%E3%82%89%E3%82%B5%E3%83%A8%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%83%A9

☆ スペシャルサイト
TEAM OKUYAMA(映画制作チーム)
 http://www.teamokuyama.com/taizo/jirai/

2014年7月31日木曜日

【映画備忘録】 韓国映画 「怪しい彼女」


「鈍感さに僅かな繊細さが加わると、幸せが舞い降りてくる」 ということ。



2014年に公開された韓国映画で、「古典的」「純粋」「凶暴」の三拍子揃った、意外にも感動作品。

口悪い婆ちゃんが、突然20歳の自分に戻り、家族や仲間を翻弄しつつも、絆を深めていく。

信じられないトラブル、出来事が、家族、仲間それぞれが気づくべきことを気づかせてくれる、一歩立ち止まって今の周りの環境を俯瞰で眺めさせてくれる、そんな作品。


女優は垢抜けなさがお婆ちゃんキャラにハマっている「シム・ウギョン」。
 一見、イモトにも見えるその容姿とは裏腹に、歌唱力が素晴らしい。他になかなか居ない特徴ある女優。



















公式サイト:http://ayakano-movie.com/

俳優は日本であまりヒット作がないが、爽やかイケメンで、どこかまた素朴さが残る「イ・ジヌク」。
日本のマダムがほっておかないのは、言うまでもない。
ドラマ「エアシティ」では、共演がきっかけでチェ・ジウと交際に発展していたようだ。




監督は、あの社会に衝撃を与えた原作「トガニ」を映画化した「ファン・ドンヒョク」。
聴覚障害を持つ子どもたちに暴行や性的虐待を行い、それを隠ぺいしようとした教育者たちの本性を暴き出した、実話を元にした作品。

トガニについて:http://dogani.jp/




今回の作品には、そんなシリアスな場面はないが、この監督らしさが垣間見れる場面がある。

お婆ちゃんが女でひとつで息子を育ててきた回想シーン。目の中に入れても痛くない自慢の息子。
息子も国立大学の教授まで上り詰めた。


この作品は、最初は笑いに笑って、最後は涙を流すしかない、そんな作品であるが、リズミカルで、昔の綺麗な心を思い出させてくれるヒントも織り込まれている、爽快感が残り香となる素敵な作品。


鈍感で不器用なお婆ちゃんが、20歳に突然戻ったとき、何かが変わってくる。

自分を振り返り、傷つけた人を労り、ほんの僅かな繊細さが芽生えたとき、幸せが舞い降りてくる。

このストーリーは韓国特有の歴史・文化・慣習背景があるからこそ映える、そうつくづく思う。

日本人には作れない作品だ。






2014年6月2日月曜日

【映画備忘録】 デンマーク映画 「偽りなき者」 


 「人を疑う自分自身を疑う」ということ。

2012年のデンマークのドラマ映画。トマス・ヴィンターベア監督、「007/カジノロワイアル」でタフな悪役を演じたマッツ・ミケルセン主演。クリスマスを迎えるデンマークの小村を舞台とし、集団ヒステリーの対象となった男性を描く物語である。2012年5月に開催された第65回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門で上映され、ミケルセンが男優賞を受賞した。





なぜ、真面目に生きてきた男が、こんなにも酷い仕打ちを受けなくてはならないのか。

現代社会の人の心の闇を表現した、悲しくも学ぶことの多き作品。

デンマークの小さな田舎町を舞台に、美しい自然とそこに生きる素朴な人々の普通の情景が、心安らぐひと時をくれる。


ただ、その美しい画と相反し、人から疑われることの恐怖と悲しさ、そして「疑う人」の安易で短絡的な判断基準に、ドキッとしてしまう。

その人の心の深淵を見ようとしない限り、人を疑うのは非常に危険なことだと気付かされます。

村人も皆、自己保身のために、その純粋な男を疑ってしまう。 


ただ、最後には彼の純真たる強さに感動せざるを得ない。


この作品を見て、今一度立ち止まって、人を疑う自分自身を疑ってほしい。


http://itsuwarinaki-movie.com/



2014年5月26日月曜日