2016年11月2日水曜日

【フィリピン取材レポート①】乳児院へ訪問

2016年8月25日より、初めてフィリピンの地に降りる。

今回の目的は、「のんびり+現地取材」の予定であったが、結果的に「現地取材のみ」となった。

1週間の間、現地の人間と極力近い距離感で生活をすることで、本質的な生活者のインサイトが見えてくる。

具体的には、800円以下の安宿、タクシーを使わず、庶民の乗り物を利用、現地プライスの食事。

【マニラにある乳児院へ取材】

当初、児童養護施設への訪問の予定だったが、旅行中に予定の合う施設を電話でダイレクトに確認した結果、ある乳児院と約束を取り付けることができた。

場所はマニラのアクアシティエリア南部に位置する、低所得者が多く住むアナログな町だ。

 

今にも崩れそうな家、生ごみの腐った匂い、そんな中、子供は裸足で遊んでいる。
これがフィリピンの日常であり、現実の生活がここにある。

親切な若者の案内により、乗り合いバスを乗り継いて、施設へ到着。
この町には少々違和感があるほど、清潔感のある建物だ。





















※個人情報の観点から、施設に関する詳細情報は記載しておりません

園長さんは英語が堪能な60代の女性。この世代で流暢な英語から、話を聞かずとも育ちの良さが伺える。

現在、0歳から3歳までの幼児が18名ほどおり、ボランティアスタッフにより運営が成り立っている。

ただし、施設の建設から光熱費や子供の食費などは、園長さんの持ち出した。
(フィリピンでは社会保障への税金投入は、現状、あまり期待できない。犯罪撲滅が最優先だ)

この施設では、園長さんの人脈から里親のインターナショナル・アライアンス制度(国際里親支援)を利用し、欧米などの先進国にする裕福な家庭で、なんらかの理由で里子を引き取りたい家庭へ送り出している。
(アメリカでは引き取られた子供は20万人、日本では4千人と言われている)

すでに送り出した子供が大学生になり、イギリスから園長さんへ定期的に連絡も来ており、「園長さんがお祖母ちゃん」という存在となっている。20年以上、末永く支援している結果だろう。

園長さんはいう。「乳児院にくる子は、皆、捨て子で両親も知らないし、兄弟も知らない。でも、ここに来れば人生の選択肢が増え、血のつながった両親がいなくとも幸せになれる。」

私もそれは納得できる。

親が働かず、道端で物乞いをする子。
幼児だけで、赤ちゃんをあやす景色。
夜の歓楽街でスリをする子。
妊婦のお母さんが物乞いをするサポートをする子。
大雨で冠水した路上で生活する子。



園長さんの里親支援により、社会に出るまでの生活が保障され、様々な選択肢を得られる。

この状況こそフィリピン社会の現実であり、根本的な原因は歴史的、政治的背景からさまざまな要因が考えられるが、一つ言えるのは、抜け出せない負のループにハマっているということだ。




日本でも親と住めない子供達を受け入れる施設が不足している現状であり、改めて、「血のつながった親と一緒に住むことが本当に幸せなのか」、考えさせられることとなった。

小沼 敏行


▼そもそもフィリピンってどんな国? 
(くわしくは外務省HP:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/philippines/data.html

1 面積: 9,404平方キロメートル(日本の約8割)。7,109の島々がある。
2 人口: 約1億98万人(2015年フィリピン国勢調査)
※かなりの人が調査に漏れているだろうから、日本とほとんど変わらないと考えられる。
3 首都: マニラ(首都圏人口約1,288万人)(2015年フィリピン国勢調査)
4 民族: マレー系が主体。ほかに中国系、スペイン系及びこれらとの混血並びに少数民族がいる。
5 言語: 国語はフィリピノ語、公用語はフィリピノ語及び英語。80前後の言語がある。
6 宗教: ASEAN唯一のキリスト教国。国民の83%がカトリック、その他のキリスト教が10%。イスラム教は5%(ミンダナオではイスラム教徒が人口の2割以上)。
7 平均寿命: 男性69.5歳、女性73.9歳(フィリピン国家統計局)